政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

その日、退勤時間まであと少しというときだった。
開いたドアにつられて顔を上げると、そこに貴俊が立っていた。


「こんばんは」
「あらあら、いつお会いしても素敵だわ~」


頭を下げながら中に入ってきた貴俊を見て、隆子がうっとりする。


「妻がいつもお世話になっております」
「いえいえ、こちらこそです」
「隆子さん、目がハートになってますよ?」


万智に突っ込まれ、「あらやだ、そう?」と隆子は両手で頬を覆った。


「今日はどうしたんですか?」


約束はしていなかったはず。


「夫が妻を迎えに来るのはおかしい?」
「ぜんっぜんおかしくないですよー。ほら、明花さん、早く帰る支度してして」


万智はキャビネットから明花のバッグを取り出して急かす。
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