政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「う、うん、ありがとう。でも、まだあと少し時間が」
「すみません、フライングでしたね。ちょうどカタがついたところだったので、その足で来てしまいました」


壁掛け時計を見て迷う明花の前で、腕時計を確認して貴俊が肩をすくめる。

(なにか大きな仕事を片づけたのかな)

明花は、貴俊が具体的にどういった仕事をしているのか知らない。桜羽ホールディングスの次期社長であれば、その内容も多岐に渡るだろう。


「時間っていったって、あと数分じゃないの。いいから気にしないでお帰り」


隆子に優しく促されて立ち上がる。


「すみません、ありがとうございます。では、お言葉に甘えて、お先に失礼します」
「次回から気をつけます」
「そんなのいいんですよ。明花さんをよろしくお願いしますね」


微笑む隆子の隣で万智が手を振る。
ふたりに見送られ、明花は貴俊と片野不動産をあとにした。
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