政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
フェアじゃないと注意されたため、慌てて謝った。
「そうじゃない。こんな場所でそういうのはやめてくれ」
「そ、そうですよね。人がたくさんいるのに私ってば」
「意味が違う。今すぐ押し倒したくなるからやめてくれと言ったんだ」
「押し……押し倒……っ」
思わず繰り返して途中で止める。それは本気で困る。
「外食して帰ろうと思ってる俺にはものすごく酷だ」
再び歩きだした貴俊は、コインパーキングに止めていた車の助手席のドアを開けた。
今夜は外食らしい。明花を乗せ、車を発進させた。
フロントガラスにあたる雨は暗くなりかけた街を濡らし、ネオンの光を揺らす。
「突然、外食を思い立ったんですか?」
いつもなら朝のうちに約束を済ませるか、スマートフォンにメッセージが送られてくるが、今日はどちらもなかった。