政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
(どうして貴俊さんがその話を知ってるの?)
思い出すのも苦い過去はいっさい話していない。貴俊に憐れだと思われたくなかったから。
照美と佳乃の目が揺らぐ。顔に〝まずい〟と書いてあるような表情だ。
でもすぐに立てなおし、佳乃がはぐらかす。
「きっと明花がそう言ったんですよね? そんなの作り話ですから」
刺すような視線が明花に飛んできた。
邪悪なものから守るかのように、貴俊が明花を自分の背に庇う。
「明花は告げ口のような真似はしません。今の話は調査で知った事実です」
「ちょ、調査?」
ふたりは目を丸くして貴俊を凝視する。
明花も初耳だ。
「あなたがたが明花にしてきたひどい仕打ちは、すべて知っている。どれもこれも筆舌に尽くしがたいのもばかりだ。義理とはいえ娘であり、妹である彼女によくもそこまで……」
貴俊は握りしめた拳を震わせた。