政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

照美は断りも遠慮もなく個室に入ってきた。


「単刀直入に言わせていただきます。明花とは離婚して、佳乃との結婚を考えていただけませんか? 愛人の子では、やはり世間の目というものがございますし――」
「揃いも揃っていい加減にしてもらえませんか」


喜び勇んで佳乃を推薦してきた照美を、貴俊が低い声で制す。その言葉と声は、明花も聞いたことがないほど威圧的だった。
個室の空気がピンと張り詰める。


「……あ、あの、私たちは会社のためを思って」


さすがに照美と佳乃も貴俊の冷ややかな反応に気づいたようだ。先ほどまでの勢いはどうしたのか、急に及び腰になる。


「あなたがたに心配していただく義理も必要もありません。ありがた迷惑と言っていい。愛人の子に産まれたのは明花の責任ですか? むしろ明花は被害者です」
「ひ、被害者だなんて。それを言うなら私たちのほうです。夫に愛人を作られ、その子どもの認知を許して、大学を出るまで面倒を見てきたんですから」
「生活費は仕方なくとも、生活面の面倒を見てきたのは明花のほうじゃありませんか。家事のいっさいを彼女ひとりに押しつけ、日も当たらない狭い部屋に閉じ込めていたそうですね」
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