政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

(これは……)

やわらかな感触のそれを思いきって取り出す。


「……クマ」


それはクマのぬいぐるみだった。
子どもの頃、クリスマスに母に買ってもらった大切なものだったのに、汚いからと言って義母に捨てられたものとそっくり。


「〝みっちゃん〟とはちょっと違うかもしれないけど」
「えっ」


驚いて貴俊を見つめる。

(今、みっちゃんって言った? どうしてその名前を?)

貴俊にぬいぐるみの話はしていないはずだ。


「義理の母親に捨てられたと、幼い頃の明花が俺に話してくれた」
「あのとき私が?」


結婚を迫った場面は思い出していたが、その会話は覚えていない。
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