政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

翌日、明花は地図アプリを頼りに貴俊に指定された店に向かった。

駅を出てスマートフォンの画面に集中しながら歩き、〝目的地に到着しました〟というアナウンスで顔を上げる。目の前にはレンガ造りの外観をしたセレクトショップがあった。
いかにも高級そうな店構えのショーウインドウには、美しく着飾ったマネキンたちが道行く人たちに向かって決めポーズをしている。

尻込みしながら店内に入り、なんとはなしに左手のハンガーラックに向かう。白を基調とした内装は明るく、洋服や小物の色を際立たせている。

ところが目はしっかり開いているはずなのに、なぜかどの商品も視線が上滑りしてよくわからない。
たぶん、この店が醸し出す高級感のせいだろう。場違い感が半端ではない。

今日着ているオーソドックスなアンサンブルのカットソーとフレアスカートでは、スタッフにも〝入る店を間違えてない?〟と思われそうでヒヤヒヤする。

しかし逃げ出すわけにもいかず、目の前の洋服を手あたり次第に手に取っていると、背後から声をかけられた。


「どのようなものをお探しですか?」
「は、い……。ちょっとしたパーティーに着られる洋服を」
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