政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

すぐに目鼻立ちのはっきりとした背の高い美女が近づいてきた。三十歳前後だろうか、幾何学模様をしたシンメトリーのワンピースがよく似合っている。


「いらっしゃいませ、お待ちしてました」
「こんにちは。雪平明花と申します」


急いで頭を下げて自己紹介すると、彼女も同様に挨拶をする。


「安藤萌香です。桜羽くんは高校時代の同級生なんですよ。アメリカで机を並べて勉強してました」


やわらかい笑みが美しい。

(元カノだったりするのかな)

答えのない詮索をついする。萌香のように綺麗な人こそ、彼にお似合いの女性だ。

胸の奥がかすかにひりついたのは、形ばかりとはいえ彼が明花の結婚相手だからなのか。

(愛のともなわない結婚なのに嫉妬なんてね)

おかしい話だと自嘲する。


「ちなみに付き合ってはいませんからね?」
「えっ、あ、いえっ」
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