政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

ドアに手を伸ばした明花を制し、貴俊が運転席から降り立つ。

言葉の意味が咄嗟にわからず、言われた通りにじっと動かず待機。車の前方を回って助手席側に来る彼をぼーっと見入る。
素敵という単語は、きっと彼のためにある。そう思わずにいられない。

そうしている間に貴俊は助手席のドアを開け、明花に手を差し出した。

そうされて初めて、彼が明花を制止した理由を知る。エスコートするためだったのだ。

(お姫様みたい)

年齢に見合わず乙女チックに考えてしまうのは、こういうシチュエーションに慣れていないから。いや、慣れていないどころの話ではない。
こんなふうにして助手席から降り立つことなど、これまで未経験だ。

小学生のときから世間に〝愛人の娘〟だと罵られ、軽んじられてきたため、男性に恭しく扱われた経験はない。

恐る恐る彼の手に自分の手を重ねると、貴俊はそっと明花を引き上げた。
その力強さに動揺したせいか足がふらつき、うっかり彼の胸に飛び込む格好になる。すかさず彼に支えられ、意図せず抱き合ってしまった。


「ご、ごめんなさい。慣れない高いヒールなので」
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