政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
すでにたくさんの人が集まり、あちこちに歓談の輪が出来上がっている。明花の目には誰も彼もセレブリティに見えた。
煌びやかなイブニングドレスを着ている女性もいて、別世界に迷い込んでしまったよう。手持ちのスーツで来なくてよかったと心底思う。
ビュッフェスタイルらしく、壁に沿って料理が並んでいた。
「タカ」
声に揃って振り返ると、背の高い男性が笑みを浮かべながら近づいてきた。
ふわっとしたパーマヘアに目鼻立ちのはっきりした顔は、ヨーロッパの人のように彫りが深い。ストライプ柄のネクタイは店に合わせたかのように青白だ。
(この人がここのオーナーなのかな)
知人と言っていたが、貴俊とは同年代だ。
「忙しいから来ないと思ってたけど」
「あとで恨まれたらかなわないからな」
お祝いでかけつけたのに、なぜかふたりを取り巻く空気は微かに堅い。友好的な感じはなく、互いの口調もどことなく冷ややかだ。