俺様系イケメンは、私にだけ様子がおかしい
「アンタ……春夏さんだっけか」


「な、夏秋です……」


「三組の草野 百合って知ってるか?」



ピクリ、と腕が震える。


夏祭りの時に、藍沢さんが隣にいた子に"百合ちゃん"と言っていた。

きっと、藍沢さんの友達の子だろう。



「話したことは、ないけど……」


「気をつけた方が良いぜ。朝練の時、アンタの下駄箱でうろちょろしてんの見たから」



下駄箱と言う単語が出てきた瞬間、響子ちゃんがバッと私を見つめた。

力強く訴えかけるように私を見つめる響子ちゃんに、なんて返せば良いか分からなくて口角を無理矢理あげて笑い返した。

我ながら不器用すぎる……



「まぁまぁ、今日ぐらいは気張らずに文化祭を楽しめって。明日から草野に聞けば良いじゃんよ」



少し重たい空気になったのを察したのか、私の肩をポンと叩くと望月君は笑顔で声をかけてくれた。

この反応的に望月君は野田君から先に話を聞いていたのかもしれない。



「どうするかは春夏さん次第だからな、俺はもうやる事はやったぜ」


「な、夏秋です……でも、野田君。ありがとうございました。心配おかけしました…」




きっと彼が望月君に私が嫌がらせを受けてるって話を伝えてくれたのだろう。

私の名前を間違いまくったり、響子ちゃんに罵倒されて喜んでる変わってる人だけど根は良い人に違いない。


野田君は私の言葉に適当に相槌を打つと、響子ちゃんに1枚のメモ用紙をスッと渡した。



「は?なにこれ」


「俺の電話番号とメアド……多々良さんに朝一番に死ねとか言われてえからさ」


「死ねば?早く消えてよ」



響子ちゃんはビリビリにメモ用紙を野田君の前で破ってみせたが、野田君はそれもご褒美だと思ってるらしい。

ハゥッ!と訳の分からない悲鳴を出し、大きな身体をプルプルと震えながらなぜかグーサインを望月君にしていた。

その望月君も気味悪そうに野田君を見ていたけれど。


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