嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

15

〈ふふん、ふふん~♩ ハァ、今日は楽しかった〉

 庭でのお茶の後――屋敷に入れない子犬君は窓側で、オルフレット様と書庫で好きな本の話を楽しみ。メイドに呼ばれてオルフレット様と向かうと、たくさんの夕食が食堂に準備されていた。

〈おお、これは凄い食事の量だな〉
(お父様……作りすぎです)

 別室でも、カウサ様をはじめオルフレット様の御者、近衛騎士にも料理は振るわれ、庭の子犬君にも豪華な食事が準備された。料理長が腕を振るった温かな料理、ロレッテとオルフレット様はお父様、お母様と楽しい会話と夕食の時間を楽しんだ。
 
 その楽しい食事も終わり、城へと戻るオルフレット様のお見送りを、子犬君としている。

 ワンワン!

「ロレッテ嬢、子犬君、今日は楽しかった」
「はい、私も楽しかったですわ。またお越しくださいませ」

「ロレッテ、ありがとう」
 
〈ふふん~ふふ~。うれしいな、ロレッテにまたと言われた。もし願いが叶うなら、ロレッテをこのまま連れて帰りたいな――1人でする食事より、楽しかった〉

(え、1人の食事? それはどういうこと?)

 しかし、オルフレット様の声を盗み聞きをしているロレッテが、その答えを聞くことは叶わない。オルフレット様だって、知られたくないと思っているだろう。

 微笑みの後ろに隠れる真実が、心配だけど聞けない。

「では明日、学園で会おう。良い夢をロレッテ嬢」
「はい、オルフレット様、良い夢を」

〈実に、いい日だったな、ふふっ、ふん、ふふん~〉

(フフ、歌ってらっしゃる)

 その陽気な鼻歌は、馬車の扉が閉まると同時に聞こえなくなった。この声は――オルフレット様が側にいる時にしか聞こえないようだ。

 ――オルフレット様。

 王城に向けて去っていく、オルフレット様の乗った馬車を見送る。ロレッテも休んでいた王妃教育を、開始しなくてはならない。

 先程、書庫で。
  
『ロレッテ嬢は読書が好きだね』
『はい、好きです。王城の書庫にもたくさんの読みたい本がありですわ』
『そうかい、王城か……』

〈ロレッテが城に来てくれるのは嬉しいが……城でロレッテを1人にさせるわけにはいかない……僕は執務室で書類整理があるし、教育係も今は休暇を出している。王妃教育の開始は難しいかもしれない〉

(どうして? オルフレット様は連れて帰りたいと言う割に、私から城へ行くというのは難しい? 王妃教育も今はできない?)

 わけがわからない。

 オルフレット様は執務室で1人書類を整理していて、食事も1人でとっている。教育係に休暇を出していて、王妃教育の再会もできない状態。

 ――今、王城の中でなにか起きているの? その何かを、オルフレット様がお1人で抱え込んでいらっしゃる?

 これは調べてみなくてはならない。
 
 ロレッテは馬車の見送りが終わると、すぐ屋敷に戻り宰相をされる、お父様を訪ねることにした。
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