嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

14

 どこからか白いモコモコが飛び出て、オルフレット様に飛びついた。すると辺りの冷気は消え、寒さは去っていった。

〈なっ、なんだ? この白いモフモフは?〉
(……こ、子犬君?)

 冷気が落ち着くと、子犬君はオルフレット様から離れ足元に着地して、かわいいお目目でロレッテ達を見つめてくる。

 ワン!

「ん、子犬?」
「子犬君、来てくれたの?」

 ワンワン!

 しかし今日の子犬君は怒ったように、オルフレット様に向けて吠えた。足元で鳴く小さな子犬君に彼は驚きを隠せないでいるものの、何処かホッとした様子を見せた。

〈よかった。この子犬のおかげで気持ちが落ち着いて、冷気が止まった……ま、また僕はロレッテを傷つけてしまうところだった〉

(また、私を傷付ける?)

 オルフレット様の『傷付ける』といった言葉をロレッテは考えてみても、その様な記憶はなかった。

 ――私が忘ているのかしら?

〈もっと鍛錬を積まなくては、ロレッテにふれることすら出来ない……ボクはロレッテに触れたい〉

(オルフレット様……私もです)

 オルフレット様は"氷の王子"と呼ばれている。それは表情、仕草からでもあるけど、実際は貴族達よりも魔力が高く氷属性。お父様の話では、ご自身の魔力コントロールするのが難しいと聞いている。

〈他のものに触れてもならないが……愛しいロレッテに触れる、抱きしめると、僕の気持ちは高まり抑えきれなくなる。残念だ、ロレッテとキスしたかった〉

(キス……私もしたかったです)

 オルフレット様からではなく、ロレッテの方からすればよかったのかしら。でもそれをしてしまってら、淑女らしくないとオルフレット様に言われるのは傷付く。

 ワンワン!

「おっと、1人にしてごめんね。可愛い子犬だね。ロレッテのかい?」
 
「いいえ。子犬君はたまに遊びに来てくれる、私のお友達です」

 ワン!

「おお、そうか。君はロレッテの友達か……ありがとう、君に助けられたよ。お礼に苺を食べるかい?」

 ワンワン!

「フフ、食べるか。ロレッテ、テーブルに戻ろう」
「はい、子犬君もいきましょう」

 その場にしゃがみ、ロレッテは子犬君な頭を撫で抱きあげた。軽い子犬君を片手で抱きしめて、空いた手をオルフレット様の腕へと乗せテーブル席に戻る。

「オルフレット様すこし休みましたら、書庫に移動しませんか?」
 
「いいね。ロレッテのおすすめの本を聞きたいな」
「おすすめですか? たくさんありですわ」
「おお、それは楽しみだ」

〈ロレッテが選ぶ本はどれも面白い……しかし、僕を助けてくれたが……その子犬の居場所は羨ましい〉

(羨ましい?)

 オルフレット様の視線は子犬君を抱っこした、胸元を見ていた。

 ……もう、胸ばかりなんだから。
 
< 14 / 70 >

この作品をシェア

pagetop