嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

20

〈魔力に酔うような感覚……メアリス嬢の近くにはいたくないな。早々退散しよう〉

(魔力に酔う?)

「カウサ、後は頼む」
「オルフレット様?」

「はい、かしこまりました」
 
「ちょっと、オルフレット! 今日一緒にいないといけないのよ! 待ちなさい!」

「行こう、ロレッテ嬢」

 オルフレット様はロレッテの手を握ると、メアリスさんが呼んでも振り向かずその場から離れた。

〈カウサには悪いが……これで、今日は誰にも邪魔をされず、ロレッテを独り占めにできる〉
 
(私を、独り占めにできる?)

 その意味はわからないのだけど、握られた手が嬉しい。
 
 学園まで近付くと、オルフレット様は私に。

「さて、ボク達はダンスホールにダンスを踊りに行く、それとも、庭園で散歩をしながらゆったりするかい?」

 と聞いた。
 
「それは? オルフレット様、本日の授業はないのですか?」
 
「ん? ロレッテ嬢は忘れたのかい? 今日は学園主催のパーティーの日だよ」

(え、パーティーの日?)

 学園主催で月一に開催される、交流会の日だということを、しばらく休講していたからか忘れていた。

 ――だから登校される皆さんは、気合の入った正装をされていたのね。
 
 交流会とは授業もなく婚約者と過ごすのもよし、ダンス、お茶会でお相手を見つけるのもいい日。だから、メアリスさんはオルフレット様を迎えにいらした。

 もしかすると――彼女の発言の裏にあったのは、オルフレット様は婚約者のロレッテよりも自分を選び、今日の交流会に参加をする予定だったということ。

(私に悔しい思いをさせたかった)

 本日の交流会で、いつもお忙しいオルフレット様にごゆっくり、過ごしてもらうチャンス。

「オルフレット様、私はゆったりを選びますわ。交流会への参加は自由のはず。しばらく書庫で過ごしませんか?」
 
「書庫か、いいな行こう」

 これで人目を気にせず、オルフレット様がゆっくり休めますし。ご一緒に過ごせるなんて……嬉しすぎます。

〈フフ、今日はずいぶんと積極的だな。それに、ロレッテから二人きりなりたいと言い出すなんて、嬉しい。ふふん~ふふっ~〉
 
(照れますが……喜んでいただけたみたい)

〈ロレッテと邪魔が入らず、二人きりの時間が取れるのは嬉しい。もうすぐ視察で国中を回るから、今のうちにロレッテを堪能しておきたい。王都を出たら一週間はこちらに戻れないからな〉

(視察? オルフレット様と一週間も会えない……の)

 彼のお仕事だから、わがままは言えないけど寂しい。

〈出来れば視察に出る前に、ロレッテが普段から身に付けているものが一つ欲しい〉

(私の持ち物? ハンカチがいいかしら? それとも……〉
 

「ロレッテ嬢」

 優しい声と優しい瞳を向けられて繋いでいた手が……オルフレット様の長い指に、ロレッテの手が絡み握られる。これって憧れていた恋人繋ぎだ。

「書庫でゆったりしたら、テラスで何か食べよう」
「はい、オルフレット様」

〈笑った顔が可愛い。本当はロレッテを視察に連れていきたいが……父上とカウサに止められた〉
 
(わ、私⁉︎)

 いくらオルフレット様が好きなお父様でも、まだ許さないと思いますので、出来る範囲でオルフレット様を癒します。
< 21 / 70 >

この作品をシェア

pagetop