嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

オルフレット

 昨日はロレッテと過ごせて幸せに浸り、今日は学園が休み、早朝から城の離れの執務室に篭り仕事をしていた。

 あの女性と知り合ってから――皇太子の兄上は全く執務をしなくなった。その為。父上、宰相、ボクとで手分けして書類整理をしている。ボクが処理できる書類は多くない、宰相も違う仕事があるため、父上と側近が夜通し執務をしている。

 少し前に父上が話しかけたようだが――前国王の父上が生きてさえいてくれば、私がすでに国王になっていた。早く、国王の座を譲って出ていけ! と言うばかりで話にならないらしい。

 父上はあの状態の兄上に譲るわけにはいかない。と悲しんでいた。ボクに、いつの日か素敵な国王になりたいと言っていた、兄上ばどうしてしまったのだろう。

 

 ❀



 兄上のことは気になるが……父上に任せられた書類は後回しには出来ないと、黙々と書類に目を通し判を押した。

「出来た、この書類を父上に送って……よし」

 この瞬時に書類を送れる魔導具がなければ、もっと執務は大変だったろう――次はどの書類を片付ければいい? 執務机に積まれた書類を眺めて、減った気がしないとため息が漏れる。

「オルフレット殿下、ご休憩をなさってはどうですか?」
 
「ああ、そうだな……ところでカウサ。昨夜、兄上が開いた舞踏会でいさかいがあったみたいだが……話は聞いているか?」

「はい、その話は父と兄から伺っております」

 カウサとその話をするために、執務机からソファーに移動した。

 初めは多くの貴族を集めて、開催された舞踏会だったが。その舞踏会が余りにもタチが悪く、参加する貴族は減り。いまでは数人ぐらいしか集まらないらしい。

『ボクが参加して見てきましょうか?』と父上に申したが『ダメだ』と父上に止められた。聞いた話によると、その舞踏会で振る舞われる料理、酒は金に糸目をつけず極上品ばかり。

「オルフレット様、紅茶です」
「ありがとう」

 カウサが用意して紅茶と、お茶菓子がテーブルに並ぶ。
 それを手に取り一口……くっ、口の中に渋い茶葉の味か広がる。ここに置いてある紅茶の茶葉が古くなったのか……まぁ、カウサの腕でなんとか飲める。

 カウサも自分のを入れて向かい側に座り、先程の会話の続きを話す。

「それで、誰と誰が言い争っていたんだ?」
「セルバン殿下と、メアリスさんだそうです」

 余りの驚きで手が滑り、紅茶のカップが落ちそうになる。

「なに、セルバンが昨夜の舞踏会に来ていたのか? そして、メアリス嬢と言い争いをしていた……あの二人は知り合いなのか?」

 どういう接点だ?

「私の兄の話では二人は、どうも顔見知りのご様子。その場にいた、父もその様に言っておりました」

 カウサの父は父上の側近で、兄は兄上の側近に付いている。母上には私の乳母で、カウサの母が専属メイドとして付いているはずだ。

「カウサは、二人がなにで揉めたかを知っているのか?」

「はい、聞いております。セルバン殿下がメアリス様に『聞いていた話とちがうじゃないか! 私は恥をかいたぞ!』それに対してメアリス様は『仕方がないじゃない、上手くいっていないの! あなたはあなたで頑張りなさよ』と何のことかは分かりませんが。そのような内容を話していたようです』

 いったい、何がうまくいかなかったんだ? 

 こちらでも調べたいが……父上に「調べているから手を出すな」と言われているが。昨日、学園で会ったセルバンの言葉がいくって気になる事があった。

 ボクの方でも調べるか。

「オルフレット様、先程父から通達があったのですが、今、宰相コローネル公爵が、公爵家に務める数人の使用人を連れて王城に向かっているそうです」

「あぁ、その話は聞いている」

 嬉しいが……ロレッテも一緒に来てくれないかな? 
< 27 / 70 >

この作品をシェア

pagetop