嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

3

 書庫へ向かう途中のロレッテは、学園で倒れたときの記憶を思い出して取り乱し。両親に抱えられて、寝室へと連れ戻され、出歩くことを禁止にされた。

「ロレッテ、読みたい本があったらメイドに頼みなさい。それと明日の午後、オルフレット殿下が屋敷にいらっしゃる。会うか会わないかは……ロレッテが自分で決めなさい」

 ――そんなの、答えなんてすでに決まっている。

「デュックお父様! わ、私はオルフレット殿下にお会いしたくありません……屋敷に会いに来ないでとお伝えてくださいませ」

 だけど。お断りの言葉をお父様に告げてもらっても、オルフレット殿下は翌日も屋敷へと訪れた……それは1回だけではなく、2度3度と屋敷へいらっしゃる。

 ――なぜです? あなたは私よりも好きな人ができたくせに。私の声も届かなくなるほど、あの子に夢中なくせに。

 

 今も忘れられない、学園の庭園での出来こと。

『オルフレット様、バラが見事ですわ』
『あ、ああ、バラが綺麗だね』
『…………』
 
(……ウソですわね。オルフレット様はまた、あの子を見ていらっしゃる)
 
 コローレ学園に入学してすぐ、校内で迷うあの子を案内してから、オルフレット殿下の態度が変わった。いつも冷静でロレッテたちの間に愛はなくとも。婚約者のロレッテに優しくしてくれたオルフレット殿下が学生達の噂を信じ、ロレッテを遠ざけはじめた。

 また無視をされるのも、冷たい瞳で見られるのも今のロレッテでは耐えられない。殿下に会うのが怖い……ロレッテじゃないあの子をやさしく見つめる、オルフレット殿下は見たくない。

 ――そうだわ。いっそうのこと学園を辞めてしまって、領地に戻り。オルフレット殿下の幸せを祈りながら、余生を過ごそうかしら。
 

 
 思考をくり巡らせるロレッテの部屋の扉が、コンコンコンと鳴る。

「はい」

「ロレッテお嬢様、オルフレット殿下がいらしました」

(え? また……いらしたの?)

 会うことをお断りした日からずっと、オルフレット殿下は屋敷へといらっしゃる。両親はあまりにも屋敷を訪れる、オルフレット殿下を不憫に思ったのか、『一度くらい会いなさい』と言いはじめた。

 ――こんな私のことなど、ほっとけばいいのに。
 ――こんな、ウジウジする私もキライ。

 もう、とことん嫌われればいいのと。勢いにまかせて『オルフレット殿下にお好きな人ができたのでしたら――私と婚約破棄してください』と手紙を書いて送った。

 その返事はすぐに返る。

[落ち着いて、ボクはロレッテ嬢との婚約破棄など考えていない。2度とそんな事を言わないでくれ!]

(どうして? ロレッテとの婚約破棄を承諾してくださらないの?)
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