888字でコワイ話
第13話「ウラヽガワのひまわり」
とある町の花火祭の帰り。
今SNSでちょっと話題のひまわり畑がウララ川という川そばにあるらしいから、皆で行ってみようということになった。
なんでも100万本ある中に1本だけヤバいひまわりがあるらしい。
なにがヤバいのか誰もわからないまま、面白半分で橋を渡り、ひまわり畑へ入った。
昼間ならまだしも、街灯もなく真っ暗でそれらしいものは全く見つからない。
誰ともなく帰るかと言い出したとき、近くに女の人が立っていた。
一瞬ギョッとしたが、幽霊ではなく眼鏡をかけた女の人だった。
大正ロマン風の浴衣が似合う美人。
男ばかりの僕らは全員デレた。
「あなた達、早く帰りなさい。
橋をよく見なかったの?」
ちょっと強めに言われ、立入禁止の看板を見逃したのだろうかと慌てて謝った。
「いいから早く帰りなさい。
子供が来るところじゃないのよ」
子供扱されて急に恥ずかしくなった。
戻る時、見落とした看板がないかと見渡しながら、橋の上で皆で振り返った。
見えたのは暗闇の中で揺れるひまわりの影だけだった。
誰かスマホのフラッシュが光った。
「何も写ってなさそうだけど、話のネタに」
そうだなと言いながら渡り終えたとき、もう一度振り返った。
その時、橋に名前が彫られていることに気がつく。
ウラミガワ……?
妙に思いつつ駅まで戻ると、風雨にさらされた地図があった。
そこには、かすれた字でウラヽガワとあった。
経年劣化で横棒が2本が消えたのだ。
その時、蛍光灯の下で、スマホの画面を見ていた仲間達が悲鳴を上げた。
「うわあっ! これなんだこれ!」
ひまわり畑の中に1本だけ、長い黒髪を振り乱した女の人ようなものが写っていた。
異様さにゾワッと背筋が凍りつく。
恐怖にかられ、僕らは今日のことはなかったことにしようと約束して帰った。
これを読んでいる君も、ウラヽガワ、ひまわり、で検索して場所を特定できても、決して行かないで欲しい。
約束したにも関わらず、SNSに写真をアップした友人は、原因不明の発熱が続いている。
僕らに帰るように叱ったあの人がいっていたように、子供の僕らには手に負えないことがあるんだろう。
君は絶対、ウラヽガワのひまわりには行かないで欲しい。