888字でコワイ話

第15話「虫指しメガネアプリ」









指さし動画が流行ってる。

仲間同士で指さし合い、指された人にキラキラやハートのエフェクトが降り注ぐ。

指さし動画を見ていると関連で「虫指し動画」というのが上がってくる。

「虫指しメガネ」という新しいアプリらしい。

アプリを開くと画面が虫眼鏡のようになっていて撮影すると、対象に向かって蟻や蜘蛛などのエフェクトが一斉に降り注ぐという物だった。



ある日、クラスの女子が彼氏を盗った盗られでもめた。



「あんたの虫指し動画上げてやる!」

「勝手にやれば?」



撮影ボタンをタップしたリノが、画面を見ながら笑う。



「蜘蛛がうじゃうじゃ! キッモ!」



トモはそんな動画を上げられた位どうという事はないという感じだった。

ところが急に奇妙なことを言いだした。



「ちょっ、何これっ、やだっ!」



トモが何かを払うように後ずさりした。

リノが執拗に追いかけ回す。



「あははっ、蜘蛛まみれ!」

「いやっ、やめてっ!」

「あはははっ!」

「ぎゃああっ!」



リノから本気で逃げ惑うトモはまるで、本当に蜘蛛が見えているみたいに必死だった。

私たちは何が起こっているのかわからない。



「ぎゃああ、やめてぇ!」

「ざまあみろ!」

「ひいいっ!」



さすがにやり過ぎだと思って止めに入った時には、トモはもう気絶していた。

後でその動画を見たら、怯えた様子とエフェクトの動きが完璧にあっていた。

トモには本当に虫が見えていたのかと思う位だった。



不思議に思ってアプリをダウンロードしてみた。

どうやら虫を選べるらしい。

スズメバチはどうだろう。

対象になる物を探してみたけれど、何となく怖くて人や生物にカメラを向けることができない。

私は自分の腕にカメラを向けて、撮影ボタンを押した。

その瞬間、ズキッと痛みが走った。



「うそ!?」



次々に鋭い痛みが腕に降ってくる。

すぐ撮影をやめたけれど、一瞬で腕がぶくぶくに腫れ上がる。

痛みに耐えているうちに気が遠くなった。




翌日、目覚めたのは病院だった。



「どこでスズメバチに刺されたの?」



ママに言われて背筋が凍った。

すぐにアプリを消した。

数週間後、学校へ通えるようになったけど、トモは未だに休んでいると知った。

多分、蜘蛛の毒にやられたんだと思う……。

                                                 








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