888字でコワイ話

第24話「メイと体育祭」


 




 サングラスを買ってしまった。

 甥っ子の虫眼鏡を買いに来ただけなのに。

 一緒について来た姪っ子が、それなら体育祭に来てもいいよ、だって。

 そんなにイケてる?

 古風美人な店員さんも感じいい。

 やっぱイケてるんだ!





 とはいえ見せる相手もなし。

 だがせめて、イケてる俺を馬に見てもらうぜ。

 なけなしの日銭で品定め。

 あれ、なんだ?

 馬の頭上に数字が浮いてる。

 まさか、あの数字が着順なんてことないよな?

 とか言いつつ、まさかに賭けるのが楽しいのだ。

 えっ、嘘だろ!?

 当たった!!

 何度も試しても百発百中。

 以来、サングラスのお陰で金に困らなくなった。





 今日は兄夫妻と一緒に、姪っ子の応援だ。

 1位になったら最新スマホを買ってやると約束をした。

 ま、勝てなくても精一杯やりきればそれでいいんだぞ。

 リレーが進み、アンカーの姪っ子は3位でバトンを受け取った。

 頭の上には数字の1が浮かんでいる。

 ぐんぐん距離をつめ、前走者と競り合う。

 その時、姪っ子と隣の生徒がもつれ、転倒した!

 すぐ立ち上がったものの、姪っ子の数字は3に変わっていた。

 結果はやはり3位だったが、全力で走り悔し泣きする姪っ子を見て、俺は久々に感動した。





 姪っ子にスマホを買ってやった。

 兄貴たちには内緒だぞと、ついでに小遣い10万円をやった。

 弟にも少しは分けてやれよといったら、急に泣き出した。

 そんなに感激しなくても……。



「叔父ちゃん、ごめん!

 初めから、おじちゃんにサングラス買わせて、競馬で当てたお金で、スマホ買ってもらうつもりだった。

 私じゃまだ馬券買えないから」



 えっ!?

 それじゃあ、サングラスの力を知っていて、わざと……?

 恐れ入った……。

 今日びの高校生舐めてたわ。



「叔父ちゃん、もうそれ使わないで!

 使う度に寿命が縮むって店員さんが……!」



 おまっ、人の命をなんだと……!

 ……いや、でも、ろくでなしの叔父の命なんか、スマホの為ならどうってことないよな。

 つい溢したら、さらに大泣き。



「勝手だけど、叔父ちゃんに死んで欲しくないよぉ!」



 わかったよ、もう使わないことにするよ。





 姪っ子にはそう言ったけど。

 実は俺もう、末期がんなんだわ。

 あと3ヶ月。

 どんくらいの金残してやれっかなぁ。

     


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