あの一夜で身ごもりましたが、結婚はいたしません ~天才心臓外科医の猛攻愛~

 バスローブの紐がほどけてゆき、想像していたよりもずっと、筋肉がついた胸板が目の前に露になった。

 暑さも時間も忘れて、互いの肌を求めあう。

 彼は武骨な手で私の身体をいとも簡単に暴いてゆき、ときに情熱的に舌を這わせる。

 時折、体のあちこちに労わるようなキスが降ってきて涙がこみ上げた。

 本当に愛しているように触れるなんて、罪な人だ。

「ああ……妬くよ、あのバカな男に。君のこんな可愛い姿を独り占めしていたって考えると」

 彼は私の耳に舌を這わせると、一気に中に入ってくる。

 まだ耳に残る甘い言葉も相まって、腰が砕けそうだ。
 
 「……好きだよ、ひかり」

 彼はきつく私の腰を抱いて、うわ言みたいにつぶやく。

 信じたい、この恋が始まることを。

 温かい愛が育まれることを……。

 「私も、好き」

 条件反射のように口から言葉がこぼれる。

 今度こそ信じてもいい? この人の好きを。

 胸が苦しいのは、彼を本気で愛してしまいそうだったから――。
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