天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~
瀬七さんは笑顔のまま私たちに向かって手を振る。
「では星宮さん、また後で」
「はいっ、頑張らせて頂きますっ」
星宮ちゃんは弾んだ声で、瀬七さんに宣言している。目に見えないハートがたくさん飛んでいるようだ。
よ、よかった。とりあえずなんとか、逃げられる……。
ホッとしながら何気なく後ろを振り返ると、熱い瞳をとらえられ、心臓が大きく跳ね上がる。
瀬七さんはそんな私を見て、かすかに口角をあげた。
再び心臓が激しく動き出し、彼の視線から逃げるようにしてその場を立ち去る。
瀬七さん……? どうして、あんな顔をするのだろう。
やっぱり、瀬七さんは“ひかり”だと確信している……のかもしれない。
でも恵さんという人がいるのだから、そこまで構わなくてもいいんじゃないかと思う。
私のことは、もともと遊びだったわけなのだから。
いくらその場限りの遊びだったとはいえ、突然消えたのが許せないのだろうか。
だったら、一度ひかりだと認めて「あのときはすみません」と言えば、すべて丸く収まるかもしれない。
そんな考えが過りながら、これから行われる手術に意識を戻していった。
「お疲れさまでした。休憩入ります」