私が一番あなたの傍に…
「…美味しい。こういう料理ってあんまり食べたことないから緊張してたけど、幸奈と一緒に食べてるからかとても美味しく感じる」

その気持ちはよく分かる。私も緊張して所作が上手くできるかどうか心配してたけど、いざ食べ始めてみると緊張感が解けていき、どんどん料理の味が分かるようになってきた。

「私も緊張してたから料理の味より所作の方が気になっちゃって。喉を通すか分からなかったけど、食べ進めていくうちに細かいことが気にならなくなって。気がついたら楽しくて仕方がなかった」

クリスマスという特別な雰囲気も相まって、恋人と特別な空間で一緒に食事をするということが楽しい。

「俺も。やっぱりこういう店って緊張するよな。社会人になったらこういう店で食事をするのも慣れるのかな?」

社会人が皆、こういったお店で食事をしているわけではないだろうが、勝手なイメージとしてお偉いさんと食事をする際、こういったお店で食事をするイメージが強い。

「どうなんだろうね?勝手なイメージだけど、会食とかで来る機会がありそうだよね」

本当のところは分からない。そもそもこういったお店に来れるような職業の方ってそれなりに立派な職業に就いている人であろう。
一般市民はこういったお店に来ることは本当に特別な時だけだ。それぐらい敷居が高く感じている。

「会食か。俺も税理士になったらこういった店でお偉い様と食事するのかな…」

税理士は会食が多そうだ。それこそお偉い様と食事なんて日常茶飯事であろう。

「するんじゃない?そういう人達を相手に仕事をするイメージがあるし」

「そっか。そうだよな。勝手に今から緊張するな…」

スーツを着て仕事をしている愁の姿を想像してみた。大学生の彼とは違い、大人の色気を漂わせ、スーツ姿が様になっているはず。
それはそれでかっこいい。きっと惚れ直すに違いない。

「そういえば幸奈に伝えなきゃいけないことがあるんだ。実は…」

急に話題が変わった。今から何を言うの?別れを告げるなんてことはないと思う。先程、幸せにすると誓ったばかりでそれはない。
だとしたら愁が告げたいことが全く想像できなかった。一体、今からどんなことを言われるのか身構えてしまう。
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