私が一番あなたの傍に…

5章:蒼空の過去〜蒼空目線〜

もう暫く恋をするつもりはなかった。
失恋して半年ぐらい経っていたが、まだそんなに傷は癒えていなかった。
前の恋が長かった。小学生の頃から好きだった女の子と、高校生の頃から大学二年生の夏頃まで、お付き合いしていた。
でも、その子に好きな人ができたと言われ、フラれてしまった。
辛かった。自分の気持ちはその子に届いていなかったのだと、一緒に居た時間が長かった分、そう思わされた。

俺が誰を想っても、同じように俺を想ってくれる人はいないんだと思うと、誰かを好きになることが虚しくなった。
もう誰も好きにならない…とまでは言わないが、今は誰かを好きになることに臆病になっていた。
だから、幸奈に出会って、一瞬でその気持ちが吹き飛んだ。

最初はどうでもよかった。仕方なく参加した合コンに居合わせただけ。
でも、段々と気になり始めて。気がついたら、恋に落ちていた。
もう引き返せなかった。それぐらい、幸奈を好きになっていた。

でもこの恋は、好きになった途端、すぐに終わった。好きになった人には好きな人がいた。
終わった恋でもあり、始まったばかりの恋でもあった。
そして、好きになった人に彼氏ができた。完全にこの恋は終わりを告げた。

でも、そんな簡単に諦めたくなくて。今、悪あがきを頑張っている。
この悪あがきもきっと無駄になるに違いない。分かっていても、止められなかった。
俺が幸奈を好きなことを、知ってほしかった。ただそれだけでよかった。
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