私が一番あなたの傍に…
『はい。今、出ます』

出たのは母親だった。今から両親と向き合わなければならない。逃げたくてももう帰れないと悟った。
そんな緊張感と闘いながら、両親が迎え入れてくれるのを待つ。すぐに玄関のドアが開けられた。

「いらっしゃい。どうぞ」

母が玄関のドアを開けてくれた。その後ろに父の姿があった。

「ただいま。お邪魔します…」

ぎこちない笑顔を浮かべながら、両親に挨拶をした。そして、私の後に愁が挨拶をした。

「初めまして。岩城 愁と申します。幸奈さんとお付き合いさせてもらってます。本日はよろしくお願い致します」

愁は頭を下げた。その後、慌てて両親が頭を下げた。

「こちらこそ、遠路遥々お越し頂き、ありがとうございます」

今度は母に代わって、父が挨拶をした。父の目線がどこか優しくて。娘の彼氏を受け入れているかのように感じた。

「どうぞお入り下さい。中でゆっくりお話しましょう」

父が私達を招き入れた。私達は一言、「お邪魔します…」と告げてから、家の中へと入った。
久しぶりの実家は、一年ぐらい帰らなかっただけなのに、とても懐かしく感じた。

「特にお構いできませんが、ゆっくりしていってください」

父は終始、穏やかに対応してくれている。一方、母は何も言わない。それが逆に怖くて。今から告げることに緊張感が走った。

「いえ、そんなお構いなく。お邪魔させて頂いているだけでも、充分ですので」

愁は父の声掛けに常に応えてくれている。私の父に嫌われないように、必死に父と会話しようと食らいついているみたいだ。
今から同棲したい!なんて告げたら、父の反応が一転する可能性もあるので、これから父がどんな反応を示すか、そっちの方が心配だが…。
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