私が一番あなたの傍に…
「先程も軽くご紹介させてもらいましたが、改めてご挨拶させてもらいます。岩城 愁と申します。幸奈さんとはアルバイト先で知り合い、仲良くなりました。同い年なので、僕もまだ大学生です。幸奈さんと同じ大学に通っています」

まずは自分を知ってもらうことが大事なので、愁は両親に警戒されないために、丁寧に自己紹介をした。
両親は愁の言葉を聞き、娘と真面目に付き合っていることを知れて、安心したみたいだ。
でも私達からしたら、これからが本番みたいなものなので、今からがドキドキだ。

「そうなんですね。娘がいつもお世話になっております」

「いえいえ。こちらこそいつもお嬢さんにはお世話になっております」

当たり障りない会話で様子を見る。いつどのタイミングで言うか。
しかし、こういう経験がないためか、タイミングが分からない。ここは男性の愁から言うべきなんだと思うが、全部愁任せにしても愁の負担が大きい。
ここは私が前に出るべきなのか、どうしたらいいのか分からず、踏み止まっていたら、愁が先に口を開いた。

「あの。突然こんなことを言われても戸惑われることかと思いますが、それも覚悟の上で言わさせてもらいます」

ここまで言い切ったら、もう取り消せない。帰れない。この先の言葉も覚悟して言わなくてはならない。

「幸奈さんと同棲させて下さい」

愁が頭を下げた。私も一緒に頭を下げた。
ゆっくりと顔を上げる。恐る恐る両親の反応を窺う。怖い。知りたくない。何も言わないでほしい。そう思えば思うほど、俯いてしまう。
でも一気に現実に引き戻される。こんな状況下で黙っている人なんて、いるわけがなかった。
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