私の可愛い(?)執事くん
別荘

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期末テストも終わって夏休み。
私、陽、司は別荘のある小さな島に遊びに来ている。
リーダーの運転する小型クルーザーで島に移動。

毎年、夏休みに入る前に数人の執事とメイドが
ライフラインの確認、掃除を一通りしてくれるから
のんびり過ごせる。

2泊して夕方に迎えに来てもらう予定。
クルーザーを見送って別荘の部屋に入る。
窓を開けると穏やかな風がカーテンを揺らす。

日焼け止めを塗って水着の上にラッシュガードを
着て砂浜へ。

司と陽はパラソルを立てたりテーブルを組み立てたり準備していてその近くで電動空気入れでエアーマットが少しずつ膨らんでいる。ビーチボールにはすでに
空気が入っていた。

「おまたせ」
「お嬢様」
「陽、あとは大丈夫だからお嬢様と行ってこい」
「あ、はい。ありがとうございます」
残りの準備を司に任せてビーチボールを持って陽と
海を目指す。

「陽」
「はい」
「別荘に来てよかったの?」
「え?」
「いや、学校の友達とかでどこかいったりしないの
かなって。3年生だし、最後の夏でしょ?」
「お気遣いありがとうございます。
ですが一つも誘いがないんですよね。
受験生だからでしょうけど。
お嬢様がそうおっしゃってくださるなら、
誘いが来た際は考えてみます」
(それって、私が言わなかったら断ってた?)

少し陽が心配になった。
私を優先してくれるのは嬉しい。
でもそのせいで学校でうまくいってなかったら
どうしようと。
(私が陽を縛ってるのかな)

「お嬢様」
前を見ると陽はボールを私に向かって投げる。
反応してボールを打ち返す。

等間隔でボールを打つ音だけが響く。
お互い一言も話さずボールを打ち続けた。
10分くらいしたら司がを持ってきてくれた
からボールを渡して海に入る。

エアーマットには吸盤がついていてロープの先は
テーブルの方に繋がっていた。

マットにうつ伏せで陽が泳いでいるのを眺めている。
(私が泳げたら陽も楽しいだろうな)
あいにく私はカナヅチ。

緩やかな波が眠気を誘う。
「お嬢様」
完全に寝そうになったところ陽に起こされた。

「陽?」
「少し、泳いでみませんか?」
「・・・うん。あ、ちょっと待って」
ラッシュガードを脱いでマットに置いて陽の手を
掴んで海に入る。

陽は何も言わない
「陽?」
「あ、いえ、なんでもありません」

(心の準備してなかったから余計に刺激が強いというか。いや、至って健全な水着なんだけど。
あれ、恥じらいもなく脱いだけどもしかして執事が
強すぎて男として意識してない?)

赤くなったり青くなったり拗ねたり、陽は1人で表情を変えている。
「歩きますね。最初は力を抜いて浮いてください」

(浮くこと、浮くこと。力を抜いて)
「お上手ですね。
今度はバタ足をしてみましょう。
ふくらはぎだけじゃなく足全体を意識してください」
この後も授業は続いて少しだけ泳ぐコツを掴んだ。

(若いっていいな)
サマーベットで横になって若い2人を見守る
泳げない司。
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