私の可愛い(?)執事くん

.

(陽が行っちゃう)
遠くなる後ろ姿が不安で寂しくて怖くて。

ドアノブの音でベットから降りて
抱き止めた。

「お嬢様?」
「ごめん。でも、もう少しだけ・・・ここにいて」
触れられた手が過剰に反応してしまった。
(引かれた、かな)
今度はゆっくり触れて優しく包む。

「わかりました、大丈夫ですよ。
俺はここにいます」
(言うこと聞いてくれるのは執事だから。
そうじゃなかったらこんなに優しいわけない)

(あ゛あ゛ぁ、お嬢様が可愛すぎる。
耐えろ、俺!)
執事の距離感という理性と抱きしめたいという本能が
戦っている。

後ろ向きでよかった。
こんな葛藤している顔を見られるわけにいかない。
心を落ち着かせてお嬢様を布団で横になることを促す

布団をかけて、膝立ちをして手を握る。
「眠るまで俺はそばにいますよ。
いっそのこと一緒に寝ちゃいます?」
「・・・バカ」
(顔を赤くするお嬢様、可愛い)

「陽?」
(いけないいけない、気をつけないと頬が
緩んでしまう)
「すみません、なんでもありません」

お嬢様は体を少しずらして空いている手で布団を
たたく。
「一緒に寝てくれるんでしょ」
「え゛」

(誕生日と同じことして墓穴掘ってどうする!
学習しろよ!俺)

「お嬢様、いくらなんでも」
「寝てくれるんでしょ?」
恥じらいつつも答えるお嬢様に、今度は俺が顔を
赤くする。

「緊張してる?」
手の震えを感じたお嬢様は勝ち誇ったようにニヤッ
と笑う。
(お嬢様が起きる前に、他の執事が来る前に急いで
戻れば大丈夫)

「失礼します」
眠気がピークな俺は限界で考えることを放棄して
布団に入るとすぐ眠気に襲われた。

(こう見ると当たり前だけど、年相応の顔というか。
一緒にいてもこうじっくりと見たことってそんなに
ないかも)

長いまつ毛、綺麗な肌、幼い寝顔が可愛い。
思わずその頬に触れようとした。

我にかえり、寝返りをうつ。
(いや、何しようとした私!!
いくらなんでもこれはアウトでしょ!?
ていうか同じ布団にいるだけでアウトだよね!
カップルでもないのに同じ布団なんて、
いや、カップルでも段階飛ばし過ぎだよね、これ!)

寝言だとしても名前を呼ばれて胸が高鳴り、
しばらく眠れなかった。

朝食の時間になっても来ない私を心配した司に
陽ともども起こされて怒られたのはまた別の話。




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