私の可愛い(?)執事くん

「・・・はい!?いきなりなんですか!」
図星をつかれたのか陽は顔を真っ赤にしていた。
「さっき嫉妬してたでしょ。
誘われなかったことよりも2人きりでいたこと」
「だったらなんですか?」
「べっつにー、ただ苦しくないのかなーって」
「・・・もう慣れました」 

歩みを止めて俯いた陽に
まずいこと聞いたかなと少し焦る。

「俺はお嬢様のことが好きです。
あなたのいう通り嫉妬しました。
自分でも驚くくらい独占欲が強いんです。
仲間にすら妬んでしまうくらい」

明らかに俺をよく思っていないとわかる眼差し。
「ま、僕はおじょー様にそんな気持ちは今のところ
ないから安心してよ」
「いまのところってなんですか?」
「人の心は移ろいやすいからね〜」
納得のいってない陽をおいて部屋に向かう。

「どう?薫は。同じ部屋でしょ」
次の日の朝。
陽は複雑そうな顔。

「悪い人ではないのはわかってます。
でもマイペースすぎて、
あまり関わりのなかった性格なので
どうすればいいか、悩んでいます」
苦笑いを浮かべているが、どこか嬉しそう


ー新学期ー
「へー、新しい執事が来たんだ」
「そうなんだよ」
教室にいた響に話すと興味津々。

「どんな執事?」
「えっと、マイペースな感じかな。
掴みどころがなくて」
「なんか執事くん、暁くん苦手そうな
タイプ」
「うん、陽もそう言ってた。
・・・何で言い直したの?」
「その執事と区別するのにさ。
なんか話だけ聞くとその人が執事くんって
感じじゃん。」
「くんって歳じゃないと思うけど、
まぁいっか」

「ホームルーム始めるぞー、先つけー」
担任が入ってきてみんな席に座る。
「ホームルームの前に転入生を紹介する。
入ってきていいぞー」

「月島 薫で〜す、よろしくお願いしま〜す」
(か、薫!)
「空いてるあそこの席座ってくれ」
「は〜い」
指さされて窓側の席に座った。

ホームルームが終わって始業式。
新学期最初の授業は体育で響と体育館に向かう。
「え!執事って月島だったの!?」
「うん、転入してくるなんて聞いたなかったのに」
「確かにマイペースって感じ。周りに花が
咲いてそう」
「どんな感想?」

授業も真面目に受けて、お昼も周りと楽しげに過ごしていて安心した。
最後の授業は体育。
男女別でバスケ。大きなネットで男女仕切られていて
私と響は最初は見学。

相手チームが持っていたバスケットボールを
流れるように薫が奪ってダンクを決めた、
瞬間に野次が飛ぶ。

「所詮お前も持ってる側かよ!」
「フワッとしてっからバスケでこてんぱんに
してやろうと思ったのにー!」
「余裕そうな顔してちっくしょー!」

そんな野次をあしらって
こっちに気づいた薫はニコ〜と手を振ったが
顔をそらした。

「源さーん」
「呼んでるよ?」
「・・・なに?」

「かっこいいでしょ〜」
「そうだね」
呆れて答えるとやった〜と笑う。

「正直どう?」
「調子狂う」
「それは恋を自覚した人が言うんだよ」
「それは絶対ない」

しばらくして男子たちは交代。
私たちも交代でゲームをした。

授業のゲーム数が終わり、自由時間。
先生は何か用事で体育館出ていく。
男子はバスケットボールでドッチボールを
やり出した。

やめろよー、あぶねーだろと楽しんでいる。
「あ、やべ」
手元が狂ったのかボールは私の方へ。
ネットは仕切りというだけで上から
吊るされているだけで防御力はない。

ぶつかると思った時にはもう目の前。
反射で腕で顔を守り目を瞑る。
「ダメだよ〜、女の子に怪我させちゃ〜」
涼しい顔で片手でボールを止めていた。

「源さん、だいじょーぶ?」
「あ、うん。ありがとう」

6時間目終了後、薫はどこかに行って戻ってきたら
手首に包帯を巻いていた。

「月島、どうした!?それ!?」
「カッコつけて片手でやったら捻っちゃった〜」
男子たちに心配されてたけど、
怪我は気にしてないようで笑っていた。

「悪い、月島。源さんも怖がらせてごめん」
「いや、私は大丈夫」
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