私の可愛い(?)執事くん
学校祭

.

「そっか、もうそんな時期か」
「そうなんです。
俺のクラスでは喫茶店をすることになったんです」
陽の通う月影中学校では11月に学校祭
が行われる。

「確か、月末の土曜日だよね」
「はい、例年通りに」
「楽しみだね」
「ええ、まぁ」
珍しく煮え切らない返事。

ー数日前ー
「今日のこの時間は学校祭でなにをやるかを
考える。候補があれば出してくれ」

先生の言葉にガヤガヤと騒がしくなる。
「はい、先生!」
「なんだ、」
「メイド喫茶がいい」
伊吹の言葉に多数の女子から却下された。
「はい、メイドがダメなら執事喫茶はどうかな」
(え、吉田さん!?)

「でも、それじゃ不公平だよ。
それじゃ、男が接客になるだろ」
「じゃあ、混合すればいいじゃん。
男子は執事、女子はメイドの格好で喫茶店をするの」
(知らない間にどんどん悪い方向に)

「あ、あの」
「よーし、水沢の意見でひとまず決まり。
接客が苦手なヤツは調理にまわす。
これでどうだ?」
「「意義なーし」」
(そんなぁ、)

仕方ない、もう決まってしまった。なら俺は調理に
すればいい。そう思ったのに。
黒板に書かれた分担。
自分のネームプレートを調理のところに貼る。
「え、暁、接客やればいいだろ?」
「え、なんで」
「だって調理はもういっぱいだし」
「いや、人前に出るのは」
「別に、人見知りってわけじゃないだろ」
「まぁそうだけど」

複数の男子からのブーイングにより俺はしぶしぶ
接客へ。

ー回想終了ー
「陽?」
「いえ、なんでもありません」
そう言われてしまってはなにも返せない。
あまり深く考えないようにした。

数日後、俺たちの服を作ってくれるという人がきて
採寸して行く。
「はーい、女子終わったから次男子ね」
聞き覚えのある声。

(さ、桜庭さん!?)
服飾担当のメイド。初老でマイペースな方。
(なんで、よりによって)
桜庭さんが俺に気づいて目を逸らす。


「では次の子」
もう残ってるのは俺だけだった。
採寸をしてメモして行く。
「はい、おしまい」
「あ、ありがとうございます」

「あれ、名前聞かないんですか?」
(なんで気づいた、伊吹)
「フフッ、この子は親戚でね」
「そうなんですね、陽、言っといてくれよ」
「あー、うん、ごめん」

それから1週間後、桜庭さんはいくつも袋を持って
再び学校へ。
「はい、」
「ありがとうございます」
(俺、燕尾服があるのに。絶対着ないって)

桜庭さんは意味ありげにニコッと笑った。
教室の隅で袋を開くと見慣れた色。
(あの人、燕尾服そのまま持ってきたんですか!?)

グシャ、思わず手に力が入り袋が潰れる
「どうした、暁」
「・・・なんでもない」

飲食は何をしようか、飾り付けはどうしようか
など準備をして、学校祭当日。

「なんか、暁が1番、様になってる気がする。」
「そ、そんなことないよ」

「暁くんかっこいいー、」
「ねー、すごく似合ってる」
女子の反応で男子からのジェラシーを愛想笑いで
スルーした。

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