私の可愛い(?)執事くん
年明け

「あけましておめでとうございます、お嬢様」
「おめでとう、今年もよろしくね陽。
陽は今年の目標とかある?」
「いえ、今のところは特に」

年明けの挨拶を済ませて、司が用意してくれたおせちとお雑煮食べる。
(昨日も年越しそばを作って、遅くまでおせちと
お雑煮作って大変だっただろうな)

手伝おうとしたらやんわりと司に断られた。
「司、美味しい料理をいつもありがとう。
今年もよろしくね」
「お任せください!」

食休みをしてから陽から初詣に誘われ神社へ。 
すごく長い列に並んでお参りをする。
(今年も健康で過ごせますように)

「なにお願いしたの?」
「もちろん健康だよ」
「てっきり合格祈願だと思ってた」
「健康じゃないと合格もなにもないからね」
 
おみくじは私が中吉で陽は吉。
お財布にしまって御守りを買う。
「陽はどれにするの?」
「そうだな、・・・やっぱり健康かな」
「私は家内安全。みんな幸せでいてほしいから。
お父様には開運招福にしようかな」
「優しいね、渚さん」
「みんなが幸せじゃないと私が幸せじゃないから。
優しいとかじゃなくて自分のためだよ」
「それでも優しいよ、渚さん。
それじゃあ買ってくるね。」
「ありがとう」

向かって行く背中はすぐ人混みに紛れ、
私は邪魔にならないよう端っこに移動する。
バイブでスマホを開くと響からで
肩までこたつに浸かっている自撮りと
「あけおめ、ことよろ〜」
とすごく軽い新年の挨拶が送られてきた。

「おめでとう、今年もよろしく」
と送りスマホをバックにしまった。

しばらく御守り売り場を眺めていると陽が人混みから
出てきて、辺りを見回している
「陽」
駆け寄ると嬉しそうにお守りの入った袋を
渡してくれた。
「ありがとう」

そのあとは出店を見て回った。
パリッと香ばしい皮と塩気の鮎の塩焼き、
濃厚とホクホク感の
じゃがバター、
「食べといてなんだけど太りそう」

独り言を聞き流すはずがなく
「その時は一緒に運動しようよ」
とフォローも忘れない。

側から見たらスパダリ、というものなんだろうな。
陽はイカ焼きを食べている。
「陽ってスパダリだよね」
「・・・はい?」
「頭いいし、顔も整ってるし15にしては背格好も
悪くない。よく周り見てフォローかかさないし
リーダーとかじいやにしごかれても
めげない芯もある」

褒め言葉に顔を赤くしていく陽。
「いきなりどうしたんですか?」
「高校とか大学とかでファンクラブができたり
きっと引く手数多なんだろうね」

「お嬢様?」
「陽」
「はい」
「もし私に仕えるより、大切な人が見つかったら
遠慮しなくていいからね」
「え?」
困惑している声を無視して続ける
「陽ももうすぐ高校生だし、そういう人くらい
現れると思うんだ」

歩いていた陽の足が止まる。
「陽、通行の邪魔になるよ」
「・・・そうですね。帰りましょうか」
穏やかな声、でもなにか引っかかった。


(今年はもう少し攻めてもいいかな)
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