黒を以て白を制す
「ショック……」
「同じく」
「安久谷だけは一生許さん」
「あたし達の伊那君を奪うなんて」
「どうせすぐに離婚よ、離婚」
悪口シスターズが今日も今日とて不満気にぶつぶつと呟く。関係は良くなったが、これからも彼女たちとの戦いは続きそうだ。
「絶対に許さなーい!伊那さんの隣に立つのは私なんだから!」
萌が腹立たしげに叫び、今城さんが“ふふっ”と笑いながら呟く。
「あらあら、彼女にとって本当の悪役になっちゃいましたわね」
と。まぁ、でも、どれだけ揉めて悪役にされようと、これからはもう大丈夫。悪役人生をひっくり返して幸せを手に入れた私はもう何も怖くない。
今日からは悪役だけど主役。悪役けんヒロインだ。これから始まる私たちのハッピーライフの。とれだけ悪役にされようと幸せがすぐ隣にある。
そう。“い”を付け足せば『悪役怖い』になると言われてきた私、安久谷桑子もついに人から羨ましがられる人生を手に入れたのだ。いいな、くわこと。
シャレか。しかし、ただの名前。されど大事な名前。大切にしていきたい。
伊那桑子、25歳。これからは悪役にひっくり返されても『こわくない』。
黒を以て白を制す【完】


