黒を以て白を制す


 そして数日後。伊那君は社長に頼まれた会社との取り引きを見事に成立させた。勿論、社長は大喜び。約束通り有給を貰った私たちは久々に2人っきりの時間を楽しみ、その足で式場探しの旅に出ることになる。


 とは言え回ったのは数件だ。直ぐに気に入った場所を見つけてトントン拍子に式場は決まった。さすがに式はまだ先だけど、お互いの両親に挨拶を済ませ、急ピッチで新居へ引っ越し、あれよあれよと籍を入れて今日。


 始まるぜ。本当の悪役ライフが。


 「……という訳で、私たち結婚しました」


 薬指に嵌めた光輝くプラチナの指輪を見せびらかし、伊那君と一緒に職場の皆に結婚の報告をする。朝1番に嬉し恥ずかし喜ばしい報告だ。


 「はぁぁぁぁぁっ!?」

 「絶対に嘘よ!あんたの妄想か何かでしょ」

 「安久谷と伊那君が!?」

 「黙れ!帰れ!」


 当たり前だが皆ビックリだ。結婚のことは社長と部長と今城さんにしか言ってなかったから。しかも、いきなりだったし。皆まさかこんなに早く結婚するとは夢にも思っていなかったらしい。


 しかし、どれだけ騒ごうが事実は変わらない。軽い紙切れ1枚。されど重い紙切れ1枚。正真正銘、昨日から伊那桑子である。


 伊那君の両親もとても良い人だった。急ぎだったし、初対面だったのにも関わらず、娘が増えた、これから仲良くしてね。と喜んでくれた。


 私の両親もだ。目が飛びでそうな勢いでビックリしていたものの、かなり喜んでた。妹だけは『お姉ちゃんが普通の人生を歩み出すなんて信じられない。また地獄に落ちたらどうしょう。心配だ、怖い』と大号泣だったけど。


 まぁ、それも伊那君が『絶対に大丈夫。大事にする』と言ってくれたお陰で落ち着き今に至る。どうしょう。人生で今未だかつてないくらいに幸せだ。今が人生のピーク。


 でも、きっと、もっと幸せな時間が訪れるんだろう。同時に大変なときも。それを2人で支えあって共有して乗り越えていく。それが夫婦であり結婚である。二人三脚で行う障害物走みたいなものだ。

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