松之木学園♥生徒会執行部
「おい…。菜々」
「キャー!澤田っち来たー!」
「菜々、澤田君が迎えに来たよ」
「早く早く」
教室に顔を出した澤田君に女子達が派手に騒ぐ。注目を浴びた澤田君は気まずそう。普段は怯えた顔を向けられることが多いだけに好奇心いっぱいな顔は慣れていないはず。
「何です?」
「いいから。ちょっと来い」
「来い、だって」
「萌える」
「行ってらっしゃい〜」
ちょいちょいと手招かれて教室のドアの前。言うこと成すこと女子からからかわれた澤田君は、ひっそりと私を廊下の端っこに連れていく。
不良のくせにコソコソとしたりなんかして……と思ったりもするが、私含め生徒会のメンバー全員が手当たり次第に澤田君のヒーロー話をしまくった所為で澤田君はある意味、肩身が狭いらしい。現に私と歩いている今も輝々とした目で女子達から見られている。
「菜々ちー。デート?」
「あ、うん。校内デート」
「そっか。ごゆっくり」
声を掛けてきた女子に適当なことを返しながらヒラヒラと手を振る。すると、澤田君が物珍しげな表情で私を見てきた。納得が出来なさそう。
「お前……。いかにもガリ勉みたいな見た目をしておいて、そのコミュニケーション能力の高さはいったいどういうことだよ」
「さぁ……。高いんでしょうか?別に普通だと思いますけど」
「どう見たって普通じゃねぇだろ」
「んー、強いて言うなら、父、芸人。母、女優。叔父、マジシャン。叔母、演歌歌手。祖父、政治家。祖母、企業役員の家庭で育ったんで、それでですかね?」
「何だそれ。トリプルMIX無敵コンボみたいな家庭環境だな……」
サラリとお宅事情を語った私に澤田君は顔を引き攣らせる。別に引かなくたっていいのに。それを言うなら澤田君ん家の方が凄いと思う。誰もが知っている大手財閥の息子なんだから。