松之木学園♥生徒会執行部


 「近寄るなよ、六香ァ……」


 廊下の隅っこ。歯をギリギリと鳴らして怒るツンキー。いちゃつく2人にかなり腹が立っているらしい。壁を蹴るような音まで聞こえてくる。


 「OK。いい感じだね。三人とも一旦、香織ちゃんと慶彦から離れてくれる?」


 耳に付けたイヤホンを通して理央から指示が入る。言われた通り慶彦と香織ちゃんに別れを告げ、小春と鈴花と一緒に階段を上って物陰に隠れた。

 私たちが居なくなったことにより、ツンキーが先ほどよりも堂々と跡をつける。随分イライラした様子で。


 「ここで香織ちゃんはトイレ、慶彦は理科室に入って。颯と雄大はそのままツンキーを撮影。他の三人は階段を下りて物陰で待機」


 再び理央から指示が入り、各々忠実に動いていく。全体を動かしている理央はドコに居るかというと視聴覚室だ。

 この一連の流れを校長、教頭、学年主任、澤田君の両親、ツンキーの両親と共にモニター越しに見てる。


 「すみません。慶彦さん。私、トイレに行ってきますね」

 「あぁ、分かった。この辺で待ってるよ」


 理央の指示通りにトイレへ向かう香織ちゃん。それを見届けた慶彦が自然な感じにふらりと理科室の中に入る。

 この間撮った目撃証言の動画をオープニングに流して始まったこの復讐劇。何も知らぬのは理科室の鍵を外から閉めたツンキーただ一人。


 「閉めたね」

 「閉めましたね」

 「うわぁ……」


 いそいそと鍵を閉めるツンキーの間抜けな姿が皆の目に映る。隣で一緒に見ていた小春が目を細めてドン引き。鈴花はあっちゃーって感じ。


 颯は上手くいったと言わんばかりにしたり顔だ。雄大はビデオを良い位置で撮るのに夢中で、慶彦は今頃、鍵が閉まったことに気づいてゲームのスイッチを入れている頃だろう。


 理央は一瞬吹き出した笑いを一生懸命、咳で誤魔化してた。腹黒王子め。

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