松之木学園♥生徒会執行部
「あれ?慶彦さん?」
程なくして香織ちゃんがトイレから出てきてキョロキョロと辺りを見渡した。一見、他に誰も居なさそうに見える廊下。香織ちゃんの慶彦を探す声が響く。
その姿を階段の方からこっそり覗いていると、ツンキーが真面目な顔付きで香織ちゃんに近付くのが見えた。
いったい何をするのかと思えば「あれ?香織ちゃん?こんなところでどうしたの?」と、白々しく驚いたふりをして声を掛けている。
香織ちゃんから絶交され中のはずなのだが。この様子じゃ綺麗さっぱり忘れているに違いない。
「あ、原谷君。実は知り合いに校内を案内してもらっていたんですが。居なくなってしまって……」
「マジ?どっか行ったんかなぁ」
「さぁ……。置いていくような人じゃないんですが」
しょぼーんと肩を落とし困った顔を浮かべる香織ちゃん。
「良かったら俺が案内するよ。ちょうど暇してたし」
それを見たツンキーはヘラヘラと愛想の良い笑みを浮かべ、ドンッと自分の胸を叩いた。
なるほど。慶彦を閉じ込めたのはそれが目的か。きっと見ていた全員が心の内でそう思っただろう。
生徒会室で待機しているピーコも今頃『最低、嘘つき!この卑怯者!』とギャーギャー怒っているに違いない。
しかし、ツンキーは曇りなく笑ってご機嫌だ。自分が慶彦を閉じ込めたのに。
あまりにもバカらしすぎて面白かったのか鈴花が隣で吹き出した。小春はドン引きを通り越して無の表情になっているけど。