初な彼女と絆される僕
次の日から葛原の、勇剛への態度が変わった。

明らかに避けるようになったのだ。
でも、勇剛は至って変わらない。

「葛原、これ纏めてくれる?」

「は?私、まだこっちで手一杯なんで」

「………」
今までなら手一杯でも、むしろ喜んで作業をしていた葛原。
あからさまな態度に、勇剛は無言で周りを見渡し、今度は李依に声をかけた。

「中畠さん!
悪いんだけど、これ纏めてくれる?
見たところ、君が一番手があいてそうだから」

「はい!
大丈夫です!」
パタパタ…と勇剛に近づき、資料を受け取る。

「ちょっと、中畠さん!」
「え?」

「あなた、そんな余裕あるの?」
「あ、はい!
今は手があいてるので!大丈夫です!」

「は?
そんなこと言って、いつも手一杯じゃない!?
どうせ、残業になるでしょ!?
あなた、トロいんだから!」

「え……あ…す、すみません…」

葛原の言葉に、課内がシン…と静まり返った。


「中畠さん」
そんな中、勇剛は冷静に言う。
「あ、は、はい…」

「とりあえず、お願いできるかな?
その資料、午後から緊急で必要なんだ!」
微笑み言うと、李依は「は、はい」と頭を下げ、資料を抱えデスクに戻った。

そして勇剛は社員達に呼びかけた。
「みんなも、手があいたら中畠さんを手伝ってくれないかな?」

「私、手伝いまーす!
こっちは、後回しにしても大丈夫なんで!」
「俺も!これ終わったら、いけますよ」
二人の社員が手を上げた。

「ん。じゃあ、頼むね!」

「「はい!」」
「中畠さん!私、こっちするから!」 
「俺も、もうすぐ取りかかれるよ」

「あ…ありがとうございます!」

勇剛は、その光景を微笑ましく見つめて葛原に言った。
「葛原、早く仕事戻りなよ。
“手一杯”なんでしょ?
ここはいいから」

「え?あ…」

あくまでも、穏やかで柔らかい。
しかし鋭くてどこか冷たい声色に、葛原はそそくさと仕事に戻った。


「―――――ありがとうございました!
おかげで、なんとか出来ました!」
二人の社員のおかげで、纏め終わった李依。
お礼を言い、勇剛の所へ向かった。

「課長!出来ました!
確認お願いします!」

「うん!ありがとう!
……………ん!綺麗に纏まってる!」

「良かった!」

「シミズさんとトクラくんもありがとう!」
「ありがとうございました!」

「はーい!」
「いいえー」

「中畠さん、仕事に戻って?
――――――あ、今日ランチ何食べたいか考えててね……!」
「あ…はい!」

勇剛の囁きに、李依は微笑みデスクに戻った。
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