初な彼女と絆される僕
「――――私のせいでしょうか?」
葛原の一件で、李依は責任を感じていた。

「どうして?」

「葛原先輩、勇剛さんのこと好きだったんですよね、きっと…
だから――――――」
「でも、仕事に影響を与えるなんてダメでしょ?
それこそ“公私混同”だよ?」
「そう…ですね…」

「それに、僕は一切“辞めろ”なんて言ってないよ。
葛原が嫉妬してしたことだとしても、仕事は仕事だもん。
僕は、私情を挟んだりはしない。
でも、庇うようなこともしない。
僕には関係ないと思ってる」

「勇剛さん…」

「もちろんそれは、他の部下達に対してもそうだよ。
お互いに気持ちよく仕事が出来ればそれでいい。
でも、ランチやプライベートでは関わりたくない。
今までは李依と付き合ってなかったから、ランチ一緒したりしてたけど今は違う。
もう僕には、李依だけだから。
李依としか関わりたくないんだ」

「…………なんだか、また新しい勇剛さんを知った気がします」
勇剛の言葉の端々に、冷たさを感じた李依。
苦笑いをして、勇剛を見上げた。

「そう?
でもね、これが“僕だよ”
なんか、みんな僕のことを“優しい”って勘違いしてるけど、僕は決して優しくないよ。
興味があることや、好きな人には熱を持てるけど、それ以外はどうでもいいって思ってる。
仕事や課長職もやりがいを感じてるから、努力するし、一生懸命仕事する。
李依のことも大好きだから、尽くしたいし、李依のために何でもしたいと思ってる。
――――――こんな僕…嫌…かな?」

「え?」

「嫌いに…なった……?」

「え?え?ま、まさか!?
好きです!勇剛さんのこと」

確かに、冷たいなと思う。
でも、間違ってるわけでない。

李依は、ぶるぶる首を振って(そんなことで嫌うわけないと)否定した。

「そっか…良かったぁ…!」
心配そうに窺う勇剛に、微笑んだ李依。
勇剛はホっとしたように笑った。

お洒落なレストランで食事をした、二人。
ゆっくりして、店を出た。


「――――――もう、こんな時間か……
また明日も仕事だし、帰ろうね!」

「あ…は、はい」
(まだ、帰りたくないなぁ…)

指を絡めて手を繋ぎ、ゆっくり李依のアパートに向かう。
その間李依は、切なさを感じていた。

日に日に勇剛への想いが募り、帰る時間が寂しくて堪らない。

「………」
(勇剛さんは“寂しい”って思わないのかな?)

背の高い勇剛を切なく見上げ、そんなことを考えていた。

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