初な彼女と絆される僕
「―――――“李依”」

そして後日。
勇剛は、仕事終わりに李依に声をかけた。

「え?」

「大事な話があるんだ。
一緒に来てほしい」

李依を連れて、ある場所に向かった。


レストランの個室。
中には、糸岩が待っていた。

「え?糸岩、さん?」

「李依。
僕の話を聞いてほしい」

李依を見据えて言う、勇剛。
その真剣な眼差しに、李依はゆっくり頷いた。

「…………まずは、これを見て?」

DNA鑑定書を、テーブルに置く。

そこには……勇剛と糸岩の娘に、親子関係がないことが書かれていた。

「え……勇剛さん、これ…」

「彼女の娘さんの父親は、僕じゃない。
これで、わかってくれるかな?」

「嘘……」

“僕の子じゃないって言っている以上、何か理由があるんだと思う”

裕弓の言葉が蘇った。
その瞬間にとてつもない後悔が込み上がり、李依は自己嫌悪に陥っていた。

「ごめんなさい!勇剛さん!
ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

何度謝罪をしても、しきれない。
李依は何度も頭を下げ、謝罪を繰り返した。

「李依!違うんだ!
謝ってほしくて、これを見せたんじゃない。
君を取り戻したくて、証明するために見せたんだ!」

「え……取り、戻す……?」

「そうだよ! 
僕は、李依が好きだ!
李依が入社した時からずっと、君を見てた。
こんなことで、離れたくない!
君と、これからも沢山の思い出を作りたい。
李依の可愛いところ、真っ直ぐなところ、ピュアでちょっと抜けてるところ、他にも沢山の李依は僕だけのモノなんだ!
僕が、最初で最後の男になりたい。
誰にも渡したくない!
だから李依、また、僕のところに来て?」

李依の目が潤みだす。
溢れて、涙がこぼれた。

それを、勇剛が優しく拭う。



「………私も…」

「ん?」

「勇剛さんが、大好きです……!」

「うん!」

「ごめんなさい!
話をちゃんと聞かず、一方的に逃げるようなことをして」

「ううん!
いいんだ。
春美とは都合のいい関係で、いい加減に付き合ってたのも事実だから。
李依からすれば、軽蔑されることもしてきたんだ。
だから、当然のことだよ?」


「勇剛さん。
私こそ……私で良ければ、また…彼女にしてください……!!」

李依は微笑み、真っ直ぐ勇剛を見上げた。
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