お針子は王子の夢を見る
翌日、ルシーは切れ端を持ってマノンに断りを入れた。
「自分のミスでドレスをダメにしてしまって……。だから舞踏会には行けません。お断りをしていただけますか?」
「ミスって」
引き裂かれたそれを見て、マノンは言葉をなくした。
「シェルレーヌかい?」
答えられなくて、ルシーはうつむく。
「どうして……。今から作り直しても間にあうかどうか」
「もう無理です」
ルシーはうつむいた。今から作り直す気力なんてなかった。
「だから、欠席を……。最初からそうするべきだったんです。舞踏会なんて身の程知らずだったんです」
「あれだけうれしそうだったのに。どうしてそう思うようになったんだい?」
聞かれて、ルシーは迷った。が、結局は話した。
自分が父の死を悲しんでいないから神がバチを下したのだと思った、と。
「悲しくないわけないだろ。悲しい、だけど前を向かなきゃいけない。そうやってあんたは頑張ってきたんだ」
「だけど……」
「私だって旦那をなくした直後から店に立ってきたんだ。それに、あんたが働かなかったらシェルレーヌを食わせて来られなかっただろ?」
ルシーは黙ってうつむく。
「辛いことを無理やりな解釈で納得しようとしたんだろう。けど、間違ってるよ。母を悪者にしたくないんだろうが、それはあんたの母にとっても良くないことだ」
ルシーは答えられなかった。
マノンは大きく息をついた。
「お城にはこちらから連絡しておくよ」
マノンが言い、ルシーは黙って頭を下げた。