クールな御曹司は強気な彼女を逃さない
コツコツコツ

ヒールの音が、大理石でできた床をリズム良く鳴らす。

そして、すれ違う男の人が目を見開いたと思えば、頬を赤く染めてすれ違う。

ここに来るまで何人の人がそうした事だろう。

当の本人は全く気付いていない。


エレベーターが目的のフロアで止まる。

またコツコツとヒールを軽やかに鳴らし、ドアを開けた。


「いらっしゃいませ。
何名様ですか?」

グラスを拭いていた手を止めて、30代くらいのマスターが声をかけてきた。


「ひとりなの。空いてるかしら?」
と微笑む。


すると、マスターはほんの少し目を開き、僅かにニコリと口角を上げて
「カウンターで良ければどうぞ」
と案内してくれた。


「ありがとうございます」
そう言ってカウンターの1番右から3番目の席に座った。
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