姉の身代わりに
「下手したら、オーガストには私のほうが相応しいとか言い出すかもしれない。だからね、まずはオーガストが私に嘘でもいいから求婚するようにって言ったのよ。そうすれば、あなたも動くしだろうしってね。私から見たらオーガストとリーゼルの関係に焦らされたけど、オーガストから見たら、あなたと私の関係が気になっていたみたいなのよ」
 だからあの日、マキオン公爵家には二通の書類が届いた。
「もしかして、僕のせい?」
「さあ?」
 核心に触れようとすると、そう言って彼女は誤魔化す。
 ブレンダンは優しくエリンの腹に触れた。
「気分はどう?」
「ええ、問題ないわ。だから、あの二人の結婚式にも出席できたわけだし。リーゼルったら、私の身体のことを考えて、日程を決めたらしいから。絶対、お姉様にも出席してほしいって。本当、かわいいわよね、私の妹。だけど、オーガストに睨まれたわ。彼は、もっと早く式を挙げたかったらしいからね」
「リーゼルが男じゃなくてよかったって思うよ」
「どうして?」
「君がリーゼルのことばかり話をするから、嫉妬しそうだ」
「まあ」
 嬉しそうに微笑んだ彼女は、身体をひねって彼の唇に自身の唇を重ねた。
 濡れた艶やかな唇は、どこか色めいている。
「ねえ、ダン。そろそろね、お医者様もね。夜のほうを再開しても大丈夫でしょうって」
「え? もしかして、それって僕のことを誘ってるの? どれだけ我慢したかわかってる?」
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