姉の身代わりに
3.妹(2)
☆☆☆

 ブレンダン王太子とオーガストは弟と兄のように仲のよい関係らしい。それにエリンとオーガストは同い年で、学院でも同じクラスであった。
 たまに食堂のテラスで、その三人が楽しそうに談笑しているのを見かけた。
 ブレンダンもオーガストも、その視線の先にはエリンがいた。
 ――二人とも、お姉様が好きなのね。正当なマキオン公爵家の娘だし、あの美貌だし、同じ女性でも憧れるのだから、仕方ないわね。
 そんなことを想いながらリーゼルは遠くから彼らを見つめ、気づかれる前にその場を離れる。
 リーゼルは学院でも孤立していた。
 マキオン公爵家を名乗りながら、マキオン公爵の血を継がない娘。
 それでも二つ年上の義理の姉が学院に通っている間はまだよかった。エリンが率先してリーゼルをいじり、それに取り巻きが同調する形だったからだ。
 エリンにやられるのはいつものことだし、慣れている。だから、対応の仕方もなんとなく心得ていたつもりだ。
 たまにエリンの真似をして手を出してくる者たちもいたが、エリンからの仕打ちに比べたらかわいいものだった。
 だけど、エリンが学院を卒業すると「エリン様の代わりに私たちが」というエリン信者によって、エリンよりも酷いいじめを受けた。
 教科書を隠されるのはもちろんのこと、破かれ、投げ捨てられる。すれ違いざまに押してくる、転ばせようとする、髪の毛を引っ張られる。怪我をするかしないか、ギリギリな身体的接触。それでも怪我をしたことは一度や二度ではなかった。
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