清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉は相田と顔を見合わせると、慌てて立ち上がった。

「東雲社長、もう頭を上げてください。そのお言葉だけで、私は十分ですから……」

 穂乃莉は東雲の脇に駆け寄る。

 それでも東雲は頑なに頭を上げず、穂乃莉の何度目かの説得で、ようやく姿勢を戻した。


「どうかおかけください」

 ソファをすすめた穂乃莉は、顔を上げた東雲の瞳を覗き込んでドキッとする。

 まっすぐな瞳の奥には、揺るぎない強い意志のようなものが感じられた。


 ようやくソファに腰かけた東雲が、しばらくしてゆっくりと口を開く。

「実はつい先日、ホテルの営業部に所属する吉村が、私を訪ねて本社へ参りました」

「吉村さんが……!?」

 穂乃莉は目を丸くすると小さく声を上げた。


 あの日、穂乃莉と加賀見が支配人の執務室を出る時の、吉村の呆然とした顔が思い浮かぶ。

 加賀見を執務室まで連れて行ってくれたのが吉村だったことは、後で加賀見から聞いていた。


「吉村から事の詳細を聞き、正直愕然としました。支配人について、良くない噂はチラホラ入ってはいましたが、まさかそんな事になっていたとは、夢にも思わなかったのです。完全に管理を怠った私の責任です……」
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