清くて正しい社内恋愛のすすめ
 案内された部屋の前に立つと、ウェーブがかった髪の若い女性が、こちらに背を向けるようにして座っているのが見えた。

「お待たせしました」

 東雲が声をかけると、振り向いた女性は驚いた顔をしながら、慌てて立ち上がろうとする。

 東雲は軽く手でそれを制すると、「女性を立たせるわけにはいきませんから」と柔らかい笑顔を向けた。


 一歩部屋の中へ足を踏み入れると、途端に甘い香りが漂ってくる。

 きっと世の男性は、彼女みたいなタイプを好むのだろう。

 でも今東雲の心に浮かぶのは、気高く品のあるまっすぐな瞳だけだった。


「突然お呼びだてして、申し訳ありません。白戸咲良さん」

「いえ……。驚きました……。本当に東雲社長だったんですね。秘書の方の名刺を見た時は、嘘かなって思ったんですけど……」

 白戸は少し興奮気味にそう答えると、「こんな素敵な所、初めてで」と付け加えた。


 椅子についた東雲は、テーブルに組んだ両手を置くと、白戸の顔をじっと覗き込む。

「今日はあなたに少し、お話を伺いたいと思いまして」

「私に……? 何の話ですか?」
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