清くて正しい社内恋愛のすすめ
 それに、たとえ加賀見が久留島に残ることを決めたとしても……。

「今度は加賀見のお母さんの望みを、叶えてあげられなくなる」

 東雲はずっと心に引っかかりを残していた母親と、やっと和解することができたと言った。

 それはきっと、加賀見の母にとっても同じこと。

 長い年月を経て、やっと息子と心が通ったのだ。

 その加賀見の母は、兄弟が力を合わせることを望んでいる。

 自分のせいで母の望みを叶えられなかったと知ったら、加賀見はどう思うのだろうか。


 穂乃莉はベッドの上で膝を抱え、顔をうずめる。

 どれほど時間が経ったのだろう。

 穂乃莉は顔を上げると、おもむろに足を出し、静かに祖母の寝室へと向かった。


 そっと扉を開け、寝室の中へ入る。

 もうすでに日も昇っている時刻だが、祖母は穏やかにすーすーと寝息を立てていた。


 いつも明るくハツラツとして、穂乃莉を、従業員を、久留島グループを引っ張り守ってきてくれた祖母。

 その源にあるのは、ここ久留島本店だ。

「本店を、ここでなくすわけにはいかない……」

 穂乃莉はぐっと両手に力を込めると、自分を納得させるようにうなずく。
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