清くて正しい社内恋愛のすすめ
「正岡……」

 穂乃莉は側に立つ正岡の顔を見た途端、顔をくしゃくしゃにして再びしゃくりあげる。

「お嬢様」

 正岡はゆっくりと穂乃莉を立ち上がらせると、ジャケットのポケットから真っ白いハンカチを取り出した。


「お嬢様、よもや東雲社長の言うとおりにしようなんて、思っておいでじゃないでしょうね?」

 正岡は穂乃莉にハンカチを握らせると、そのまま穂乃莉の手の甲を優しく撫でる。

「正岡……?」

「久留島は、そう易々とつぶれるような会社ではありません。それはここ本店も、この温泉街の他の旅館もそうです」

「でも……」

 穂乃莉は正岡に縋りつくように顔を上げる。

「でも、確実に経営は悪くなる。それに……みんなの想いを守るには、それしかないじゃない!」

「……みんなの想い」

 正岡は静かにそう言うと、考え込むように一旦口を閉ざした。


 しばらくして正岡は、再び穂乃莉の顔を覗き込む。

「みんなの想いとは何でしょう? それはお嬢様が考える、みんなの想いなのではないですか?」

「え……?」
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