清くて正しい社内恋愛のすすめ
 加賀見はくすりと肩を揺らすと、穂乃莉を抱き寄せて、おでこをコツンとぶつける。

「大変よくできました」

 その途端、今までとは全然違う加賀見のキスが、穂乃莉の唇に降り注ぐ。

 それはまるで愛しいものを、大切に包み込むようなとても優しいキス……。


 長いキスのあと、加賀見はそっと唇を穂乃莉の耳元に寄せる。

「今日で、契約恋愛はおしまいだ」

 穂乃莉がこくんとうなずき、二人は再びお互いを確かめるように、そっと唇を重ね合った。



 その夜、穂乃莉のマンションの玄関には、穂乃莉のパンプスの隣に、加賀見の革靴が置かれていた。

 無造作に並べられた靴が見える廊下の先の部屋からは、うっすらと開いた扉から甘いささやきが漏れている。


「穂乃莉……」

「……加賀見」


 ベッドの軋みの中で、お互いを求める二人の吐息は、いつしか溶け合って深く深く重なり合う。


 そして月明かりがさし込むリビングでは、二つの鞄にかけられたバッグチャームが、その淡い光に照らし出されていた。

 ピンク色のさくら貝は、奥の寝室から漏れる甘いため息に包まれるように、ほのかに優しく(またた)いた。
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