清くて正しい社内恋愛のすすめ

知りたい気持ち

「みんなすごく楽しそうだったね」

「あぁ。でもやっぱり、会長のキャラが濃すぎて……」

 穂乃莉は加賀見と顔を見合わせると、ぷっと吹き出して笑う。


 あの後宴会は夜遅くまで続き、会長が酔って眠ってしまったのを合図にお開きになった。

 穂乃莉と加賀見はみんなと別れると、本店へと向かう小道を、手を繋ぎながらゆっくりと上る。

 正岡はもうだいぶ前に、「あとは若い人たちで」と言い残して帰ってしまっていた。


 二人はほろ酔いのけだるい身体を、それすらも心地よく感じながら足を進める。

 まだ頭の中では、楽しかった宴会の余韻がふわふわと残っていた。


 坂道を登りきり、急に開けた目の前の夜空では、360度取り囲むような満天の星空が二人を出迎えてくれる。

 圧倒されるほど無数の星に、加賀見が思わず足を止めた。

「こんな星空、見たことないな」

 ポツリとつぶやいた加賀見の声に、穂乃莉はなんだか自分を褒められたように嬉しくなり、「でしょ?」と得意げに満面の笑みを返す。

 それからしばらく、二人は寄り添うように夜空を見上げた。
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