清くて正しい社内恋愛のすすめ
「え? どうしたの?」

 穂乃莉は不思議に思い首を傾げる。

「いや、あまりにも穂乃莉が可愛いからさ、ずっと見ていたいなって思ってた」

「も、もう……ばか」

 再び顔を真っ赤にした穂乃莉の手を引いて、加賀見がシートの前に立った。


「せーので、一緒に座ってみよう」

「う、うん」

「せーの!」

 大きなクッションシートは、二人の身体をすっぽりと包み込むようにキュキュッと動いて制止する。

 なんて安心感のある座り心地なのだろう。

 このまま眠ってしまいそうになる程、全身がリラックスして癒される。


「こんなに座り心地が良いとは思わなかった。ねぇ、本店にもこれ置けないかな?」

「え? 中庭に? まぁ確かに座り心地はいいけど、あそこに置くには大きすぎないか?」

「うーん。そうかなぁ」

 二人はそれからしばらく、手を繋いだままシートに寄りかかり、開演前のまだ何も映っていないドームの天井に顔を向けていた。

 穂乃莉はそっと加賀見の様子を伺う。

 話をするのだったら、今がチャンスだ。


「ねぇ、加賀見」

 穂乃莉は、隣で目を閉じている加賀見に声をかける。

「どうした?」

 加賀見はうっすらと目を開けると、眉を上げて穂乃莉を見つめた。
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