清くて正しい社内恋愛のすすめ
「そうそう！　私だってびっくらこいたわよ」

「ぼ、僕もです……」

　三人の興奮した声は止まらない。


　穂乃莉はたじたじになりながら、チラッと加賀見のデスクに目をやる。

　加賀見はまだ出社していないのか、デスクに姿はなかった。


　すると花音が穂乃莉の顔を間近で覗き込んだ。

「もちろん、お休みは二人で過ごしたんですよね！！」


　花音のキラキラした瞳が、唐突に穂乃莉に切なさを呼び起こす。

　この恋愛は“契約恋愛”なのだと思い知ったばかりなのに、そんな期待のこもった瞳で見つめられても苦しくなるだけだ。


「別に、過ごしてないよ。いつも通り。私は実家に帰ってたし……」

「えぇーそうなんですかぁ」

　どことなく、ふてくされたような穂乃莉の声に、三人は顔を見合わせると、それ以降は口を閉ざした。


「ほら、お前ら。さっさと仕事はじめるぞ」

　相田の穏やかな声が飛び、三人は慌てて自分の席に戻る。

　穂乃莉もデスクの椅子を引くと、ストンと腰を下ろした。
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